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<熊に襲われたら「死んだふりをせよ」、

ガススプレイ」で反撃せよなどは無責任極まりない妄言。妄言と断じるのは以下の理由による>

意識ある状態で熊に爪や歯で攻撃されて、じっと我慢し得る人間はいない。

また、ガススプレイは、瞬時に襲い来る熊には通用しないし、それよりも、人がガスを少しでも吸ったら呼吸ができなくなるし、肌にガスが付着しただけで皮膚が炎症起こし、我慢できないうえ、目に入ったら目を明けていられない、そういうしろものである。
これでも、「死んだふり」や「ガススプレイ」を推奨するのだろうか。

以下の文書は「ヒグマの実像」からの抜粋です
[27] 北海道で1970年から今日(2013年10月末)に至る44年間に、熊による人身事故は、81件発生している。この内猟師が撃ち損じて逆襲された事件32件(死亡9件、生還23件)、一般人の事故は49件で、(発生件数は年平均1.09件)、内死亡が20件、生還が29件。死亡20件の内、武器で熊に反撃したのは1件のみで他は、皆素手で熊に対抗し殺されている。これに対し、生還した29件の被害者は皆、鉈・包丁・手鎌・ハサミ等で、また武器になる物が無い場合には、石などを拾い掴み持ち、手足をばたつかせて、羆に積極的に、反撃しているのが特徴で、(聴きとりをすると、被害者は、皆、無我夢中で熊に抵抗したと証言している)いずれにしても、熊に積極的に抵抗反撃し生還している。襲い掛かって居る熊に反撃すれば、熊が更に猛り、被害が大きくなるではないかと、想像で反論する者がいるが、そう言う人には、熊による人身事件を複数例検証して見なさいと私は言うことにしている。81件の事例を検証した限り、そう言う事例は全くない。
[28] 熊ばかりでなく、動物に襲われて、その難から己の身を守る原則は相手に対し積極的に反撃することが原則であることは、人同士の場合も含めて動物界における基本原理常識である。

[29] 2013年も道内で熊による人身事故が4件発生し、内1件は猟師の事故で、他の3件は一般人の事故です。この3件の事故の内、4月16日の 瀬棚町での、山菜のカタクリ採りの52歳の女性は鳴り物も武器も不携帯で、熊に襲われ腕や大腿部の筋肉部を喰われ死亡した。それに対し、二件目の4月29日の 静内町での、アイヌネギ採りの53歳の男性は、熊に襲われ胸と腰背部に爪での浅い引っ掻き傷を受けたが、アイヌネギを切り取る為に持参した長さ20cm程の普通の紙切り鋏で反撃し、難を逃れている。また、3件目の9月24日の函館でヤマブドウ取りの男性が熊に襲われた事故は、被害者が高い場所の葡萄を切り取るために持っていた柄の長い剪定センテイハサミで応戦し難を逃れている。

[30] アイヌは山野での熊に対し、如何に対処していたかと言うと、万が一熊に襲われた場合の身の保全のために、男は外出の際、常に、左の腰にタシロ(tasiro=tasiho、山刀)と言う刃渡り30~40cm程の細身ながら、先が尖った鉈に似た刃物を着け、右の腰にはマキリ(makiri:小刀)と言う刃渡り20cm程の小刀を着け携帯したとある。アイヌの女も普段から刃先が少し短いマキリを携帯していて、隣りの家を訪問する際もマキリを持ち歩いたとある(このことは、アイヌの民俗学者である萱野茂さんが、アイヌの民具で、また松浦武四郎は廻浦日記に書いている。アイヌはこのように熊に対して用心していたと言うこと。
 
[31] 以上の実態からも、熊に襲われての生還には刃物での反撃で、熊に痛いと感じさせることが、有効な事は明白である。そこで、私が推奨したいのは、戦前から山子ヤマゴが持ち歩いていた鉈である。鉈は我が国で誰もが合法的に携帯し得、しかも熊に襲い掛かられた場合の有効な武器であり、鉈の携帯まで踏み込まなければ、熊による死亡事故は現状より減少させ得ない事を認識すべきである。
[32] 熊との遭遇を予防する手段として、自然に無い音を出して進む事が有効だが、ラジオは音が出っぱなしで、熊との遭遇(異変)に気づき難いこと、小型の鈴は音が沢音でかき消され熊に音が届かないことがあるから不適で、ホイッスルが最適であることを私は強調したい。時々で良いから、ホイッスルを吹けば、その音は山中にこだまし響く。そうすることで、遭遇による事故は防げると私は確信している。
 
[33] それにしても、道の「あなたとヒグマの共存のために」と言う道民向けのパンフレットには「熊に襲い掛かられたら(これは爪や歯で襲われている状態を言う),首の後を手で覆い、地面に伏して死んだふりをして下さい。山に入る人は万一に備えて練習して下さい」とある。しかし私はこれは全く間違った対処法だと言いたい。これを作ったのは道職員で熊研究の第一人者として、マスコミによく登場する間野勉君、北大の坪田教授、登別の熊牧場の前田菜穂子君、知床財団の山中君ら、北大出の熊研究者、なる連中である。私から言えば、この対処法は妄言としか言いようがない。間野君は熊の攻撃は30秒から1分で終わるから其の姿勢で我慢せよと新聞に書いている(2004,9/7道新、それから今年の10/14道新に書いて居る)。皆さんどうですか、まず熊の爪や歯での攻撃に意識ある状態で無抵抗で耐え得る人間居るとお思いですか。こんな連中が道や札幌市の熊対策を、税金使い行っており、そして、マスコミは熊研究者として、持ち上げて居るのが実態。熊による人身事故を複数例検証してみれば、自分でも如何に無責任な事を言っているか分かるはずだが、していないから、臆面もなく言える訳。これは無知として、見過ごせない事で、公務員らが言うべき事ではない。
[34] 道や札幌市の 熊についての市民向けの啓発パンフ、これも彼らが書いたものだが、羆の視力について、羆は聞く力(聴力)は鋭敏だが、視力は良くないとかいている。しかし私の観察では熊の視力は非常によく、一瞬の目配メクバセで、人を識別しその人間を記憶する能力をもっているし(このことは、熊を目撃観察していると判る)、月が出ていない闇夜でも、水中の鮭鱒を岸辺から飛び込んで掴み取る視力がある。皆さんの中にも経験された方がいると思うが、熊牧場で熊にビスケット等餌を投げ当えると、それが10数㍍離れて居ても、口や手で掴み取ることでも分かる。
[35] 彼らはまた熊対策として、唐辛子を主成分とする「熊除けガススプレイ」を推奨しているが、これは、元々アメリカで、犯罪者対策で開発された物。これは瞬時に襲い来る熊には通用しないし、風上に居る熊にも通用しない。しかも熊に3m以内に接近して噴射しないと効果がない。また、人が、このガスを、少しでも吸ったら、呼吸ができなくなる。肌にガスが僅か付着しただけで、皮膚が炎症を起こし、我慢できないうえ、目に入ったら、目を開けていられない、そう言う、しろものである。と言うこと。それを承知で、使うなら別だが、私は、この「熊除けガススプレイ」は推奨しない。

[36] 熊に対して一般人は、どう対応すべきかを、私が実際に行っている事をお話しします。
先ず、北海道で、山菜採りし得る場所は、熊と遭遇する可能性があることを認識し、その準備をして入るべきです。
準備として、ホイッスルと鉈を携帯すること。
そして、現場に入った場合は、熊が居ないか、辺り全体をよく見ながら進むこと。私は時々立ち止まって、そこから見渡せる範囲の山林や藪や両側の斜面を見、熊の有無や熊の痕跡の有無を探ります。
[37] 万が一、熊を見つけた場合は、熊が何をしているか見、私の方によって来そうな場合は、穏やかな声で、ホッホッホッと声を掛ける。これで、多くの熊は声の主を見て、やおら、立ち去る。先日も知床で、私に気づかずに近づいて来る大きな熊と20m程の距離で出会い、ホッホッホッと声を掛けたら、その熊は終始穏やかな目(目付きが変わらない目)で、私を見て、やおら草付きの崖を10m程登り、私の後に下りて、ゆっくり立ち去って行きました。成獣の熊は大体、このような対応を人にします。
[38] 時に、熊は立ち上がって、人の方を見ることがあるが、これは、熊が立ち上がることで、熊は目線を高くして、辺りを見やるために行う動作で、威嚇ではありません。
また、なかなか、熊が立ち去らない場合は、少し大声でホッホッホッと声を掛け、熊を動きを見ながら熊から離れる事にしています。
[39]もし、熊が近づいて来たら、ドスの利いた声で、熊を叱りつけることにしています。人が強いことを、熊に識らせること(これが最も肝心な事です)。知床の奥に19号番屋と言う漁師の拠点があり、10数人の漁師が、5月から11月末迄の間常住しており、そこは北海道で一番多く熊が出て来る場所で、私もこの10月から熊の調査で、この場所に行っているのですが、ここの77歳の大瀬さんと言う親方(社長)は、昭和39年から50年間ここに、日々いて、日本で最も多くの熊に遭遇している人ですが、大瀬さんが言うには、熊が近づいて来た場合には、熊の目を睨みながら、ドスをきかせた声で、「コラット」と、言えば、必ず熊は立ち去る。なかなか、立ち去らない場合でも、幾度か「コラット」「コラット」と言えば、立ち去るもので、これまで何十頭もの熊を追い返したと言う事です。私は熊の目は見ますが、睨み続けることはせず、目の表情から、熊の心を見やることにしています。熊は目で、いろいろな気持ちを語っています。
しかし、私は熊に掛かられたら、ひるまず鉈で応戦することを、常に頭に置いて行動しています。





 <日本で熊と人が共存するための基本>
1、日本に「野生の熊が生息していて当然だ」と考え対応すること。
2、「熊を殺さない」、そして、「熊による被害も予防する」という両輪で対処すること。
3、共存の基本は「熊と人が日常的に棲み分けする」ことである。
4、里への熊の侵入を防ぐ基本は、熊の出る場所に「有刺鉄線で柵を造るなり、地面に有刺鉄線をリング状に広げるなり」するとよい。電気柵は保守管理に経費がかかり不適である。
5、熊が居る可能性がある場所に入る場合は、「笛と鉈」を必ず携帯することである。
6、万が一、熊に襲われた場合には、鉈で「積極的に反撃すること」である。熊に襲われて、生還した者は、皆、熊に積極的に刃物などで、反撃していることを、心に命じることである。
7、熊の棲む森林に「ドングリの木」を増やすこと。ましてや、「育木除伐」と称して、コクワやヤマブドウの蔓木を伐り殺すのはやめること。

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