ずさんで独善的な「道のヒグマ報告書」


 道が1990年から10年計画で進めてきた「ヒグマ調査の総括編(2000年3月北海道環境科学研究センター刊)」「人身被害の事例分析」を見て私は唖然とした。

 彼らが分析に供したという37事例は、総て私の論文から基本データーだけを引用し、それを独善的に分析(?)し、私の結論を総て無視した内容の結論を、彼らの愚説(熊に襲われたら死んだ振りをするといいなど)を補強するために、彼らが想像で強引にこじつけ仕上げており、一瞬私は絶句せずにいられなかった。


 その見本として、彼らの独善的例を2つ挙げると・・・

 <例の1> これは道職員としてヒグマを研究しているという北海道環境科学研究センターの分析者(?)が勝手に類別したものだが致命傷の部位が頸部あるいは後頭部にあったとする事例に、前記37事例から7例挙げ、それにはどう読み違えたのか私の論文では軽傷であったと明記している事例を2例も加え。それを根拠に、クマが襲ってきたら人は身をこごめて致命傷と成りやすい頚部と後頭部を両手で覆い無抵抗でいることも有効だという愚説を展開しているのである。この分析者は致命傷の定義も理解していないらしい。

 <例の2> 私が「彼らがいう、山野での生ゴミの放置が人を襲う熊を生み出す原因になるというようなことは、私の過去32年間の熊の人身事故の検証事例では、それを裏付ける事例は一例もない」と明言しているにも拘わらず、この分析者達は勝手に、私の報告事例37事例のうち5例の加害熊を勝手に人を襲う以前に、何らかの形で人の所持する食物に餌付けられていた個体と考えられたと想像で結論ずけているのだ。そしてこれを根拠にその独善的説を、新聞やテレビで盛んに吹聴しているのである。
 マスコミの「真実は何か」をよく吟味もせずに、このような愚説を正論であるかのように扱う(宣伝する)姿勢も改善して欲しい。

 道では毎年巨額の税をヒグマの調査研究(?)に費やしているが、年平均1.1件北海道で発生している熊による人身事件を1件たりとも、道の研究者(?)は検証していないから、熊による人身事故対策一つすら、道民のためになる提言ができないでいる現実に、道民もマスコミも、もっと目を向け批判すべきだと私は強く思う。

 道の一般向けの熊対策パンフレットについて
 道の指導で、市町村役場の窓口にはいまだにクマが襲ってきたら人は身をこごめて致命傷と成りやすい頚部と後頭部を両手で覆い無抵抗でいることも有効だとする明らかに誤った対応を図入りで解説した内容の啓蒙パンフレットを置いているが、この道の傲慢(誤りを正論とする)さを、マスコミは非難すべきではないか。

<現状を含むこれまでの道のヒグマ調査(研究)は、道民にも熊達にも何ら益をもたらしていない。研究のあり方を真摯に再考すべきだと私は強く思う >


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