襲い来るヒグマに無抵抗(死んだ振り?)を臆面もなく推奨


 2004年9月7日北海道新聞27面に、道の環境科学研究センタ−の間野勉野生動物科長が、ヒグマが人を襲う場合「ヒグマの攻撃は30秒から1分で終わるので、地面に腹這いになって後頭部で手を組み、頭や首を守ってください」とコメントしているが、人が意識在る状態で、ヒグマの爪や歯の攻撃に1秒たりともじっと耐え得る人間がどこにいようか。

 彼は我慢出来ると確信しているようだが、私には出来ません。皆さんは出来ますか。公務に関する言動には責務を負うべき公務員として、彼の発言は妄言もはなはだしいと私はいわざるを得ない。前記コメントは道新の記者に対する答えだが、記者がこの発言に疑問を持たず彼の発言を鵜呑みにして、記事にしている見識の無さにも呆れる。いまの記者の多くはその程度の見識なんだろうか。

 道が道民向けに3年ほど前に出した「ヒグマとの共存のために」というパンフにも「クマに襲われた」場合には、前記姿勢で死んだ振りをせよと図解し(襲われた場合にですよ!!!)、山に入る人は万一にそなえて日頃から練習したらよいとある。
 これらの記述は間違いで、素人以下の空論で、道民を愚弄するにもほどがあると私は批判してきたが、2年前からのパンフはなぜか2種類あって、一つは「死んだ振りの図はあるが、山に入る人は万一にそなえて日頃から練習したらよい」という字句を削除し。さらに「北米では前記姿勢を推奨しています」とある。

 もう一つのパンフは「死んだ振り」の図を削除し、「北米では腹這いになって後頭部で手を組み、頭や首を保護する姿勢を推奨しています」とある。

 要するに、彼を含めた道のヒグマ対策関係者は己の発言に確信が無いことをさらけだしているのだ。そして読者に分からないように姑息に少しずつ、パンフの内容を変えていくつもりらしい。私には彼らの姑息さが見える。

 私は1970年以来道内で発生したヒグマによる人身事件を検証してきたが、道内で猟師以外の一般人がヒグマに襲われた事件は1970年以来36件で、今日(2004年)までの35年間に、年平均約1件発生している。これを一件でも真摯に検証していれば、「無抵抗(死んだ振り)」がいかに非現実的で間違った行為であるか、そして クマに襲われて生還した人は皆鉈や包丁で、刃物が無い場合には石を拾いそれでクマを叩き、また何も無い場合には全身でもがくなど積極的にクマに反撃し生還していることが分かるはずだ。
 パンフには道内での生還の具体例を上げた方がよほど現実的で参考になるはずだ。

 また、パンフにはクマが「しつこく接近」してきた場合に、「大声、石投げは自殺行為です」をあるが、これも机上の空論で誤りである。

 私も経験しているが、「大声を出して熊を脅すこと、石を熊めがけて投げること(なかなか命中しないが)」も、なかなか人から離れようとしない熊を追い払うには有効な方法である。

 要するに、道のヒグマ研究者のヒグマに対する知識は素人以下だということである。

 現在も30年前と変わらず毎年道内で300頭から400頭ものヒグマを殺獲しており、人とヒグマとの共存という観点からも、現在までの道のヒグマに関する調査研究は道民やヒグマの益に全くなっておらず猛省を求めたい。道でヒグマ研究者なる公務員を雇用しておくこと自体税の無駄使いというものだ。

 パンフからいつ「地面に腹這いになって後頭部で手を組み、頭や首を守ってください」という文言が消えるか「己の自尊心を傷つけないように、姑息に多分少しずつ字句を変えて、いくのだろうが」、私は注視していく。


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